慰謝料に含まれるもの
交通事故による損害賠償においては、「慰謝料」という言葉をよく耳にします。
そもそも損害賠償とは、「損害がなかった状態に戻すこと」です。
そして慰謝料とは、「交通事故などの他人の不法行為によって被った精神的苦痛を緩和・除去するための金銭的補償のこと」です。
慰謝料には
- 傷害慰謝料
- 後遺障害慰謝料
の2つがあります。
「傷害慰謝料」は、交通事故によって痛い思いをしたり、病院に入通院しなければならなくなったりしたことで味わった精神的苦痛を金銭的に評価して、お金を支払うことによって鎮めるものといえます。
「後遺障害慰謝料」は、懸命に治療を続けたものかかわらず、「症状固定」後もなお後遺障害が残った場合に、今後も後遺障害によって精神的苦痛を被ることから、認定された後遺障害等級に応じて支払われるものです(症状固定のあとに、何らかの症状が残ればすべて後遺障害と認められて、後遺障害慰謝料が認められるわけではありません)。
慰謝料はどうやって算定されるのか?
「物損」の場合、事故で壊れた車の時価額や修理費用のように、具体的な金額が把握できます。
また、「人身」の場合でも、事故で仕事を休んでいた期間の給料のように、具体的な金額が把握できるものもあります。
しかし、交通事故のせいで入通院したことなどに対する精神的苦痛(傷害慰謝料)は、被害者各人によって感じ方もさまざまですし、具体的な金額で表すことは困難です。
精神的苦痛に対する慰謝料の求め方
そこで、「入通院慰謝料算定表」を用いて、傷害慰謝料を算定することになります。
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入通院慰謝料算定表は、「裁判所基準・弁護士基準」に基づいて作成されたもので、「別表Ⅰ」を原則に用います。
「別表Ⅱ」は、むち打ち症で他覚症状がない場合(症状を裏付けるMRIなどの画像所見がない場合などです)に用いることになります。
そして、入通院慰謝料算定表は、「1か月単位(30日扱い)の基準値が示されており、端数は日割り計算される」ことになります。
なお、「任意保険会社の示談額基準」でも同様の計算方法が用いられています。
しかし、基準額の低い入通院慰謝料算定表を用いており(基本的に非公開)、「裁判所基準・弁護士基準」とかなり差がありますので、被害者納得できる示談金を受け取れないという事態が生じるのです。
慰謝料の計算例
【参考事例】
追突事故に遭ってむち打ちと診断されました(他覚症状なし)。
その後、197日間(通院実日数75日)通院したケースを前提にします。
①「別表Ⅰ」と「別表Ⅱ」のどちらかを選択するのかを決める
他覚症状がないむち打ち症にあたるので、「別表Ⅱ」を使うことになります。
②実際の計算方法
197日間は、1か月単位(30日扱い)で計算すると、「6か月と17日」の扱いになります。
これをもとに計算すると、
6か月:89万+(7か月:97万-6か月:89万)×17日/30日=93万5333円
となります。
以上の計算方法は一例にすぎず、すべての被害者の方に当てはまるわけではありません。
ケースによっては、特殊な計算方法も必要になってきます。
したがって、加害者側の保険会社から提示された「慰謝料提示額」が妥当かどうかわからなければ、示談をする前に、必ず交通事故解決センターの弁護士にご相談ください。
慰謝料はいつ請求できるのか?
「死亡慰謝料」(被害者自身の亡くなったこと自体に対する慰謝料やその遺族〔相続人〕の慰謝料を含みます)は死亡時、「後遺障害慰謝料」は後遺障害等級が確定されたとき、「傷害慰謝料」は症状固定時(または完治した時)に算定できることになります。
したがって、一般的には、死亡した時、また、入通院が終わった時(後遺障害が残る場合には、後遺障害等級認定の結果が出た時)に、加害者側の保険会社に対して請求可能となります。
症状によって、大まかな入通院期間は予測できる
死亡事故は別として、事故直後には、これからどれくらい入通院が必要となるのか、後遺障害が残るのかがわかりません。
したがって、治療が終わった時点にならないと、その事故でいくらの慰謝料になるのか明確にはわからないのです。
しかし、むち打ち症の場合には「3か月~6か月前後」、骨折などの重症の場合、手術のための入院期間とそのリハビリ期間も含めて「6か月~1年前後」の入通院期間になるので、慰謝料額のおおよそを算定することができます。