交通事故に関する誤解

最近では、インターネット上に情報があふれており、その情報の真偽もわからずに自分にも当てはまると勘違いしたり、ご近所の物知りなどによる体験談(うわさ話)をうのみにしてしまう人がいるのも事実です。

そして、交通事故発生後の対応に関して、誤った考えに基づいて行動してしまうと、場合によっては納得のいかない解決をむかえてしまうことがあります。

いまからでも遅くないこともありますので、ご自身の交通事故発生後の対応をぜひ振り返ってみてください。

誤解① 加害者がすべて対応してくれるはず・・・

「私のほうで保険会社に電話して、保険会社から連絡させますから」、「治療費は保険会社が払いますから」など、交通事故発生後に加害者の口から謝罪の言葉とともによく聞かれる言葉です。

ほっと安心して、保険会社からの連絡をまつものの、1週間経っても連絡が来ないので、病院にも行っていない。
名前と住所、携帯電話番号は教えてもらったけど、それ以外は聞いておらず、携帯電話にかけてもなかなかつながらない・・・。

これは実際にあったケースで、その後、2週間経ってようやく加害者側の保険会社から連絡があり、事故とケガの関連性(因果関係)の調査が済むまで、しばらく健康保険を利用して自費で通院することになりました。

救急搬送されているような場合は別として、被害者が事故現場で確認しないといけないことは、①加害者の住所と氏名(可能なら運転免許証などの写をもらいましょう)、②加害者の車両の所有者やナンバー(可能なら車検証も見せてもらいましょう)、③加害者加入の保険会社(あれば「任意保険証書」も確認させてもらいましょう)になります。

こちらの確認は、被害者に生じた損害を適切に賠償してもらうためにも必要な情報となってくるので、ぜひとも行っていただきたいことです。

なお、いったん治療費を立て替えて払うことにはなりますが、万が一、加害者側の保険会社からの連絡がすぐにこなかったとしても、健康保険などを利用して病院での治療を速やかに開始してください。

時間が経てば経つほど、事故とケガとの関連性(因果関係)を疑われてしまいます。
保険会社から連絡がなかったら、または治療費を立て替えたくないから病院へ行かなかったという理由が認められるほど、現実は甘くありません。

誤解② 人身事故にはしないほうがいい?

バイクで走行中、コンビニから出てきた加害者の車に追突されてしまいました。

その後、事故現場にきた警察官から「人身事故にするとあなた(被害者)も刑事処分を受けるから、物損事故j(人の死傷ががなかった事故)にしなさい」と言われました。
また、加害者側の保険会社の担当者も「物損事故でも治療費は払いますよ」と言ってくれています。

刑事処分を受けたくないし、治療費も払ってくれるなら問題ないと考え、人身事故の届出をしていません。

この手の話は多いですが、警察官と保険会社hの担当者が言っていることは本当なのでしょうか?

結論から言えば、保険会社の担当者が言っていることだけが本当(真実)ということになります。

誤解している方が多いのですが、刑事処分を受けさせるか否かを決めるのは「検察庁」という捜査機関であって、警察ではありません。

また、残念なことに、警察官のなかには、「人身事故になると実況見分調書を作らなければならず、手間と時間がかかる」という理由で、物損事故扱いにしようと誘導する人がいるのも事実です。

警察は人身事故にしないと、事故の状況を詳しく記録した刑事記録(実況見分調)を作成してくれません。

そうなると、後々、過失割合(加害者・被害者どちらに、どのくらい事故を起こした責任があるか、その割合)で争いになったとき、よりどころとなる証拠に乏しいという事態になってしまいます。

他方で、加害者側の保険会社の担当者が言っていることはウソではないので、当面、治療費の支払いは続けてくれます。

ただ、物損事故扱いにしてしまうと、軽微な事故として扱われるおそれがあるので、やはりお勧めすることはできません。

事故から月日が経っていないのであれば、警察も人身事故として受け付けてくれる可能性がありますし、病院も診断書を発行してくれるはずです。

事実としてケガをしているのであれば、病院から診断書を発行してもらい、人身事故としての届出を警察にしましょう。

誤解③ 事故現場で「お見舞い金」や「口止め料」をもらいました

加害者側から「迷惑をかけたので」と言われて「お見舞い金」をもらい、人身事故にしなかったお礼として「口止め料」をもらったのですが、加害者側の保険会社からは「示談金から差し引きます」と言われました・・・。

実際、このようなケースは事故の当事者間にあることで、特に加害者が仕事中で「会社にばれると困るため、これだけ払うので、示談してください!」と言われて「示談書」のたぐいを作成してしまうと、取り返しのつかないことになります

直接、加害者に金品を求めるのはもちろんのこと、加害者から「お見舞い金」や「口止め料」の名目で金品を受領することは、控えるのが望ましいといえます。

ちなみに、過去の裁判例になりますが、「お見舞い金」や「口止め料」を受け取ってしまった場合、それが「損害を補てんする趣旨」と考えられる場合には、損害賠償額(示談金)から差し引かれる可能性があるとの判断がなされています。

また、「損害を補てんする趣旨」と考えられない場合であっても、傷害慰謝料(入通院の慰謝料)算定の一事情として、考慮されてしまうこともあります。
すなわち、賠償金を別にもらえると思っていたら、お見舞い金などが賠償の一部と判断され、最終的にもらえる額が減ってしまう結果になってしまうのです。

誤解④ 弁護士に頼むと安心だけど、お金はたくさんかかる?

①「弁護士に任せれば安心」でも、②「お金がたくさんかかってしまう」と考えている被害者の方がほとんどではないでしょうか?

正直に申し上げると、①と②いずれも間違いなく「正しい」と回答することはできません

たしかに、弁護士に任せることで、複雑な手続きや書面作成、示談交渉などを代わりにやってくれるわけですから、手間と時間がかからなくなりますし、加害者側の保険会社の担当者との交渉のストレスから解放されることになります。

しかし、「弁護士に任せれば安心」と考えるのは誤解です。
各弁護士にも取扱い分野(得意とする分野)はありますし、交通事故は保険や医学的知識などが複雑にからむので、必ずしも簡単な案件ということはできません。

また、弁護士に任せれば、なんでもやってくれるというわけではありません。
事故の当事者は、あくまで被害者自身です。

ただ、ご自身(被害者)の加入している保険会社の特約に「弁護士費用等補償特約」という特約がついている可能性があります。

この特約を使うことができれば、弁護士費用や実費を自分の保険会社が一定限度負担してくれるので、自分の懐(財布)からお金を出さなくてすむケースもあるのです。

また、もし「弁護士費用等補償特約」を使えなかったとしても、弁護士報酬や実費を「後払い」(得られた示談金から精算する方法)で対応してくれる弁護士もいます。

ご存知ないかもしれませんが、弁護士報酬は、各弁護士によって自由に決めてよく、弁護士事務所によっても異なります。
弁護士費用などが高すぎると感じれば、別の弁護士を探せばいいだけなのです。

ただ、弁護士費用はどうであれ、やはり被害者にとって一番よいことは、被害者の味方になって、一生懸命やってくれる弁護士とめぐり会えるということに尽きると思います。

弁護士費用等補償特約が利用できる人の範囲

① 保険契約を締結している人
② ①の配偶者(内縁を含む)
③ ①または②の同居の親族
④ ①または②の別居の未婚の子
⑤ ①~④以外で、保険契約をしている自動車に搭乗中の人

※各保険会社の特約内容は保険会社によって違いがありますので、必ず自分の保険会社(任意保険証書に記載されている連絡先)に確認してみましょう。